住記屋

私の設計作法


 

■設計案が決まるまで

私の仕事は、クライアントの新しい生活に対する思いを聞いて、そこに住まう家族構成、生活
スタイルだけでなく、敷地条件、予算に合わせたこの世にひとつしかない家を設計することです。
それは翻訳作業のようなもので、納得する翻訳にたどり着くまで手間や時間がかかることも
あります。具体的には、初期の段階でクライアントからの要望をお聞きし、第1案を提出します。
その後その案に対するヒアリングを行い、納得ができない部分をお聞きし修正作業に入ります。
そして再び第2案のヒアリングを行います。このようにクライアントが納得できる最終案にたどり
着くまでヒアリングと、修正作業が何度か繰り返されます。
「これしかない。」と思えるような着地点を一緒に探りましょう。

 

 

■重心から考える

家のかたちを決めるということは、優先順位を決めることだと思っています。例えば、敷地の
一番気持ちのいいところにすべての部屋を置くことは出来ません。一番居心地の良い場所、
重心をどこに作り、またそこで何をするのか、といったことから私は考えます。その後その重心と
その他の居場所の関係性(仕切ったり、つなげたり)を考えながら計画を進めます。
 重心で何をするのかはその住まい手によって変わってくると思いますが、重心にはそこに
住まう家族の「記憶」を演出する場を作りたいと思っています。

 

 

■デザインについて

「デザイン重視」という言葉をよく耳にします。この場合のデザインとは単なる「意匠」という
意味で使われています。最近、私はこの意味でのデザインという言葉に違和感を覚えます。
デザイン重視で丸窓を付けたり、小さな四角窓を何個も付けたりすることは小手先の意匠
としか思えません。私の場合デザインとは「工夫する」、拡大解釈して「整理する」という意味
だと思っています。設計とは総合的に判断し決断していく作業の連続です。決断をするには、
その理由が必要です。私は自分の設計がなぜこのようになったのか、なぜこれが必要なのか
すべて説明できるようにしています。よって無駄なものは一切ありません。
しかし、人の心を豊かにする「贅沢」は必要だと思っています。
「無駄を無くし、贅沢をつくる。」 それは建築コストをデザインすることにも繋がります。

 

 

■素材について

住宅はさまざまな材料の集まりで出来ています。床や壁、天井など最終的に人の目や手に触
れる部分を仕上と呼びます。仕上の材料もさまざまですが、やはり自然素材を使いたいと思って
います。近年の新建材はどれもツルツル、ピカピカしています。確かに掃除やメンテナンスは簡
単かもしれません。しかし、人間の持っている動物的感覚はそのような素材に違和感を覚える
はずです。自然素材は、傷が付きやすく、汚れやすいのも確かです。しかしそれは本物の材料
だからこそ出る「味」だと思います。
 「古びる」のではなく「古美る」住宅を作りたい。そこに住まう人と一緒に年を重ねていく材料を
使いたいと思っています。

 

 

■外部も設計する

住宅は内部空間だけでは成立できません。外部の光や風、景色、樹木を内部空間へ導くこと
によって、内部空間は劇的に豊かになります。そのため計画の段階では内部空間と外部空間
を同時に考えていきます。外部空間の計画として庭づくりがあります。庭は四季の変化を伝えて
くれるだけでなく、樹木が育っていく喜びや、見ているだけでも心豊かな気持ちにさせてくれます。
どんなに小さな庭でもいい、一本の樹木だけでもいいので緑を置きたいと思っています。
庭も建築と同じくらい大切だと思います。

 

 

■最後に・・・

家をつくるということは、決して簡単なことではありません。しかし、クライアントにとって
新しい生活を想像し、形にしていく過程は本当に楽しいことだと思います。
そのために私が役に立てるとしたら幸せだと思っています。

住記屋ブログでは建築に関する私の考えをコラムとして記載しています。
具体的なテーマを設けて書いておりますので、ご興味を持たれた方はご覧下さい。

 

 

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